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2024/10/01 (火)
【DX Drive 2024レポート】ROI10倍超!SUBARUが行う店舗送客最大化のためのデジマ改善と今後の展望

著者: Kaizen 編集部

DX UX

DXレポート

顧客体験DXで企業課題をカイゼンするKaizen Platformが、各業界のDXの実践者をゲストに迎え、オンライン開催する「DX Drive」。

「日本のDXを加速する。」をコンセプトに、毎回、DXに関連する注目のテーマをピックアップ。ゲストと共にDXの"今"と"リアリティ"を届けるイベントです。

株式会社SUBARU 川﨑 みさ旗氏をお迎えし、Kaizen Platform代表の須藤憲司が、「ROI10倍超!SUBARUが行う店舗送客最大化のためのデジマ改善と今後の展望」をテーマにビジネスの持続的な成長に寄与するデジタルマーケティング改善について、具体的な事例を通じて解説しました。

本記事では、2024年8月6日(火)に開催されたイベントの内容をお伝えします。

川﨑 みさ旗・須藤 憲司

講演者

株式会社SUBARU
国内営業本部 マーケティング推進部 宣伝課
川﨑 みさ旗


2007年に新卒で鉄鋼メーカーに入社し製鉄所の生産管理部門にて工場の改善業務にあたる。その後2016年に富士重工業株式会社(現株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに中途入社し新多用途ヘリコプターのWEBサイト制作などを経験。2022年に社内公募制にてかねてから希望していたマーケティング推進部に異動し、オウンドサイトの運営・改善やデジタル広告を担当している。

 

株式会社Kaizen Platform代表取締役
須藤 憲司

2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、2013年にKaizen Platformを米国で創業。現在は日米2拠点で事業を展開。企業のDXを支援する「KAIZEN DX」、Webサービスやモバイルや動画広告などのUI/UX改善をする「KAIZEN UX」を提供。

著書:

「ハック思考〜最短最速で世界が変わる方法論〜」 (NewsPicks Book)

「90日で成果をだす DX(デジタルトランスフォーメーション)入門」(日本経済新聞出版社)

「AIドリブン経営 人を活かしてDXを加速する」(日本経済新聞出版社)

デジタルマーケティングの世界でCPAが悪化する3つの背景

ーまず本日のテーマについて、須藤さんより解説をお願いします。

 

須藤:現在、デジタルマーケティングは変化の時を迎えており、大きく3つの地殻変動があると言われています。

1つ目は、「生成AIの急速な進化」。2つ目は、「プライバシー/データ規制強化」。そして3つ目は、「消費者保護の強化」です。これらのキーワードについて、解説していきます。

 

デジタルマーケティングは変化の時

 

須藤:まず1つ目の「生成AIの急速な進化」についてです。先日、OpenAIからChatGPTを用いた新しい検索サービス「Search GPT」が登場しました。この生成AIの影響から、従来型の検索サービスの利用者は25%ほど減少するのではないかという予想が出ています。

おそらく今年、新しいiPhoneが登場する際には、AIが搭載されるでしょう。そうなると、人々の検索の仕方はかなり変わってくると思われます。従来のGoogleなどを利用した検索というアクションは、少し変化するだろうと言われています。

2つ目は、「プライバシー/データ規制強化」についてです。数年前から、iPhoneにITP(Intelligent Tracking Prevention)が導入されたり、Android端末でもクッキーの制約が入ってきたりしています。プライバシーやデータの規制が強まっているのです。

例えば、いわゆるターゲティング広告、ディスプレイ広告のリターゲティングなどが影響を受けています。広告の使用期間が7日間に制限されたり、ファーストパーティーデータに依存するようになったりしています。

従来は潜在的な顧客へのターゲティングが様々な方法で可能でしたが、それが規制されることにより、広告の精度が下がるなどの影響が出ています。

3つ目は、「消費者保護の強化」です。これはステルスマーケティング(ステマ)規制を始めとする景品表示法の改正に関連しています。今までアフィリエイト広告では、アフィリエイターやアフィリエイトサービスプロバイダーが規制の対象でしたが、今後は広告主も含めて規制の対象となります。

つまり、広告表現や使用できるクリエイティブの範囲がかなり厳しく問われるようになってきています。過剰な表現なども厳しく見られるようになってきたということです。

この「生成AIの急速な進化」、「プライバシー/データ規制強化」、「消費者保護の強化」により、今までのような従来型の広告、例えば運用型広告やアフィリエイト広告など、これまで多くの獲得が取れていたような施策のCPA(顧客獲得単価)が徐々に悪化する傾向にあります。

これが意味するのは、広告にお金を投入すれば獲得を伸ばせるという時代が終わりつつあるということです。つまり、いかにユーザーや消費者に良い体験をしてもらい、実際に質の良いコンバージョンを増やしていくかが非常に重要になってきています。

 

地殻変動が及ぼす影響

これまでの獲得効率が下がってしまった施策に対して、新しい施策や何らかの打ち手が求められています。これが現在のデジタルマーケティングの世界で起きていることだと考えています。

 

今後のデジタルマーケティングへの示唆

 

店舗送客数最大化のために解決すべき2つの課題

ー実際にSUBARUさんが取り組んだデジタルマーケティングのプロジェクトについて解説をお願いします。

 

川﨑:まずは、事業内容と宣伝課のゴールについてご説明いたします。

株式会社SUBARUは、自動車および航空機の製造・販売事業を展開しています。自動車部門に属する我々宣伝課のミッションは店舗送客数の最大化です。というのも、我々の売上は店舗で受注する形ですので、売上を増やすためにはお客さまに店舗にお越しいただく必要があるからです。

 

課題は店舗送客

 

川﨑:店舗送客数の最大化を図るにあたっての課題は、2点ありました。「適切なKPI設定」と「環境変化に伴うKPIの停滞」です。

「適切なKPI設定」について、我々は当初店舗送客を増やしていくためのデジタル上での先行指標として、5つのKPIを設定していました。

「見積もりシミュレーション完了」「試乗車検索」「販売店検索」「カタログ請求」「オンライン商談」の5つのCVポイントを最大化することで店舗送客が最大化できるのではないかと考えて取り組んでおりました。

結果としてKPIの増加はみられたものの、店舗送客の増加は想定よりも低い結果で推移するというところに課題がありました。

続いて、「環境変化に伴うKPIの停滞」です。車種数の増加や、追加機能などの提供すべき情報量の増加に伴い、サイト全体の情報設計・導線設計が複雑化していきました。そのため、お客さまがサイト上で迷ってしまい、各KPIの指標においてCPAの高騰およびCVRの低下が発生してしまうという課題が発生しました。

これらの課題を踏まえ、デジタルマーケティングの改革に取り組みました。全体として3つの打ち手を実施しました。「適切なKPI設定」という課題に対しては、「店舗送客に直結するKPIの再設計」を行いました。次に、「KPIの悪化」という課題に対しては、2つの打ち手を講じました。1つは「ファーストパーティデータの活用」、もう1つは「顧客体験の改善」、具体的にはUI/UX改善です。それぞれ詳しく説明していきます。

 

SUBARUが取り組んだデジマ改善

 

SUBARUが取り組んだデジマ改善

川﨑:まず「店舗送客に直結するKPIの再設計」についてです。従来の5つのKPIに対して、「試乗予約」「来店予約」といった、より店舗送客に近いCVポイントを新しく設定しました。

以前のKPIでは、CVポイントを伸ばしていても、そのお客さまが実際に来店されたかどうかは分かりませんでした。おそらく相関はあったんですけれども、直接的な店舗送客への貢献が見えないというところがありました。

今回、新しく「試乗予約」「来店予約」を入れることで、ウェブサイトに来たお客さまと来店したお客さまを繋げることができ、直接的な店舗送客数が見える化されました。

続いて、「ファーストパーティーデータの活用」についてです。これは、分散していたファーストパーティデータをSUBARU IDを使って統合し、マーケティング施策を展開するという取り組みです。各販売店やメーカーが持っているお客さまのデータをSUBARU IDに集約して、分析できる基盤を構築しました。

プライバシーポリシーの改定やお客さまの許諾など、時間はかかりましたが、統合したデータを活用するので非常に効率のいい広告配信ができました。顕在層のお客さまだけでなく、新たに潜在顧客にも効率的にアプローチできるようになりました。その結果、CPAが20%改善し、各顧客接点でのCV増に寄与できました。

最後に、「顧客体験の改善」についてです。より店舗送客に近いCVポイントを新KPIとすることで、離脱が増えてCV数が減少するのではないかという懸念がありました。そこで、各導線での水漏れを防ぐための顧客体験の改善に取り組み、新KPIにおけるCV数の増加を目指すこととなり、Kaizen Platformさんと一緒に取り組ませていただきました。

新KPIにおけるCV数の増加施策としては、2点実施しました。1つ目は試乗車や販売店を探しているお客さまが訪れるフォームの改善です。2つ目は、そのフォームに流入するお客さまを増やすために、車種ページを始めとした流入の多いページの改善です。

 

新CVを増やしていくための論点

川﨑:フォーム改善においては、試乗車予約フォームにステップ式を導入し、「次へ」のボタンと進捗率が表示されていることで、自分の現在地と残りの工数がわかるようにしました。さらに、試乗希望日のカレンダーをデフォルト表示するようにし、日付を選択しやすい形にしました。そして離脱防止策として「あと4ステップで完了します。本当にページから離れますか?」とWeb接客のようなコミュニケーションを取るようにしました。ステップ式を採用した改善施策を複数実行することで、トータルでCVRは119.8%改善しました。

 

実例:フォーム改善

 

川﨑:また、フォームで入力中に離脱したお客さまが再訪した際に簡単に予約完了ができるように、お客様が以前に入力したデータの復元にも対応しました。

「前回の続きから試乗予約を進めますか?」と復元モーダルを表示することで、前回入力した情報を再度打ち込む手間が省けますし、完了までのステップが短くなるので、再訪問者のフォーム完了率は218.2%改善する結果となりました。

 

実例:フォーム入力復元

 

川﨑:続いて、流入の多いページの改善についてです。従来の車種ページは多くの導線があり、ふと来られたお客さま、あまり車に詳しくないお客さまにとっては複雑でCVを下げているのではないかという仮説のもと、非常にシンプルに、分かりやすい表現で、ランディングページを1から作りました。

その結果、試乗車を探すお客さまのTOPへの遷移が272%、そこから試乗予約の完了が271%の改善ができました。

 

実例:広告専用LPの制作

川﨑:いくつもの改善を地道に何度も繰り返したことで、試乗予約完了のCVRが3.77倍という成果を出すことができました。

打ち手3 顧客体験の改善の成果

 

川﨑:今後の展望としては、今は自動車を買う予定はなくても、いずれ買うお客さま、潜在層のお客さまもしっかりキャッチしていきたいと思っています。

そのために重要なのが、店舗来店に結びつくナーチャリング活動です。SUBARU IDを取得いただいているので、お客様の必要なタイミングに、キャンペーンやイベントなどお得な情報を提供したり、SUBARUを選びたいなと思ってもらうような情報の出し方をしたりしていきたいです。

 

調整難易度が高いからこそ、懸念事項に一つひとつ丁寧に対応していく

ーここからは、5つの質問を通じて、大事なポイントをより深堀りしていきます。

 

須藤:1つ目の質問です。KPI再設計・各種CV実装にあたり、社内を動かしていく上で大変だったエピソードや社内説得にあたって意識されたことを教えてください。

 

川﨑:Webからの予約を計測する仕組みがなかったので、その実装に向けた各部署での調整が大変でした。例えば、店舗との連携はどうするのか? 実際に店舗にお越しいただく際の調整スキームをどう確立するのか? などを構築するのに非常に時間がかかりました。

さらに、Web予約システムの導入には、当初いくつかの懸念がありました。まず、販売店の方々が従来の電話予約に加えてWeb予約にも対応しなければならず、負担が増えるのではないかという点です。また、「本当にこのシステムが必要なのか」という声も上がりました。これらの懸念事項に対しては、担当者が丁寧に説明を行い、理解を求めました。

その後、販売店の方々もWeb予約のお客さまの受注率が高いことを実感いただき、最終的には「Web予約システムがあって良かった」と言っていただきました。ただ、そこに至るまでの道のりは非常に大変でしたね。

Web予約について

須藤:最近、お客さまの来店スタイルに変化が見られるようになりました。以前は、ふらっと立ち寄ったり、チラシを見て来店したりするお客さまが多かったのですが、今のお客さまは、事前にネットで情報を調べ、「あの車に乗りたい」といった具体的な目的を持って来店される方が増えているように感じます。こうしたニーズの変化に対して、Web予約システムの導入は効果的だったのでしょうか?

 

川﨑:お客さまのニーズはかなり多様化しています。ふらっと来店されたお客さまにも対応できますが、準備が足りない部分もあり、提供できる情報が少なくなってしまうことがあります。

しかし、事前に予約をいただくことで、お客さまの要望や尋ねたいことなどをアンケートベースで聞くことができます。そのおかげで、現場のスタッフも準備ができ、しっかりと接客ができるようになったと聞いています。

ネットであらかじめ情報を入れていただけるので、例えば「この車種とこの車種を見比べたい」とか「この機能が気になっている」といったことが事前に分かります。接客する側も、その情報をインプットでき、営業する際にもそれを念頭に置いて話ができるのは良いところですね。

来店されるお客さまの中には、単に実車を見たかっただけとか、カタログが欲しかっただけという方もいらっしゃいます。そういった方にいきなりセールスを始めてしまうと、顧客体験を損ねてしまう可能性があります。しかし、事前にそういったお客さまの要望を伝えていただくことで、こちらもしっかり準備ができます。


須藤:
なるほど。せっかく事前に予約をいただくので、お客さまがどういうところを見たいかということを含めて、期待値を設定し、体験を設計されているということですね。 

 

内製で改善する際に直面するのは、リソースと専門スキルの不足

須藤:続きまして、2つ目の質問です。CVR改善を内製で進めようとすると、どのような懸念やネックがあると考えていますか?

 

川﨑:本当は内製でやりたい気持ちはありますが、今回改めて気づいたのは、そこに充てるリソースと、専門スキルの不足です。これが今の我々にまだ足りてない部分なのかなと思います。

我々宣伝課は新しい施策がメインになってしまうので、実施はしたものの、その結果がどうだったかというところの振り返りがまだ不十分であると感じています。また、改善の専門部隊がいるわけではないので、PDCAの部分ができていなかった部分があるかなと思います。

じゃあ人数がいたらできるのかと言っても、難しいなと思っています。まず改善するアイデアを出すのが非常に難しくて、同業他社のサイトをちょっと見て「あそこの会社のところが良かったから取り入れよう」ぐらいなんです。

 

須藤:予約というアクション1つとっても、様々な場面がありますよね。試乗車の予約はもちろん、身近なところでは旅行の際の宿や飛行機の予約など、一般的にユーザーさんが触れる機会の多い予約画面がたくさんあります。

そういった意味で、異業種を含めて予約というアクション1つを見ても、ベストプラクティスが多くの場所に存在しています。そこは私たちがお役に立てる部分かなと思います。

一方で、川崎さんたちと協働する際に、私たちにはわからない部分もあります。例えば、実際のオペレーションの詳細や、こういうことがあると嬉しいといった具体的なニーズです。私たちにはある種の専門性はありますが、業界知識や御社固有の課題、お悩みについては把握しきれません。そのため、一緒に調整しながら進められたのは非常に良かったと思います。

 

デジタルマーケティングの進化について

須藤:実際に内製で進めていきたいということですが、どのようなスキルや能力を持つことで、デジタルマーケティングがさらに進化していくと考えていますか?

 

川﨑:私もマーケティングを始めて3年目くらいで、まだ情報やスキルが十分ではありませんが、基本的なデータの見方は習得すべきだと思っています。例えばGAやヒートマップの見方など、そこがベースにあって初めて様々な分析ができるようになります。

こういった知識は特定の部署がないと身につかないので、まずその土台を構築し、しっかり活用できるようにすることが大切です。ワークショップや勉強会などのベースがないと、急に実践を求められても対応できず、結局何もできないという状況になりかねません。そのため、基礎をしっかり学ぶプログラムが必要だと個人的に考えています。

 

須藤:なるほど。先ほど川崎さんから、宣伝課の業務では新しい施策を打つことが多く、振り返りに時間やパワーを充てられていないというお話がありました。今回ご一緒する中で、デジタルではデータが取れることが非常に重要で、振り返りがしやすいという点が大きなポイントだと思うのですが、この辺の重要性について、何か気づきはありましたか?

 

川﨑:そうですね。改善や振り返りに対するマインドが自分の中でかなり高まったと感じています。様々な成果が数字としてはっきりと分かり、大きな成果を上げられています。しかも、抜本的な改善ではなく、一つひとつの積み重ねで大きな成果が出るという成功体験が私の中にあるので、その重要性がよく分かります。

ただ、まだ経験がない人にとっては、「ボタンの色を変えただけでそんなに変わらないだろう」とか「それくらいなら別のことをしよう」といった考えから、改善の優先順位が下がってしまう傾向があります。改善が本当に意味のあることだと理解した上で、自らPDCAを回すマインドがとても大事だと感じました。

 

新規集客の活路はお客さまとの共創

須藤:3つ目の質問です。新規集客の難易度が上がる中での活路を、どこに見出していきますか?

 

川﨑:コロナの影響もあり、外出前に自分で調べる方が増えています。車選びでも、販売店に行く前にある程度決めている方が多いです。以前は販売店で色々聞いてみようという方も多かったのですが、そういう方が減っています。特にSUBARUのような国内でも小さな規模のメーカーでは、販売店も少なく見る機会が限られる中で、お客さまを集めるのは難しいと感じています。

ただ、我々は他メーカよりも安全性能の高い良い車を作っていると自負しています。そこをいかにお客さまに伝えていくかという観点で、新しいクリエイティブや媒体、キャンペーンなどあらゆる角度で施策を打っていこうと考えています。

また、SNSや口コミなど、第三者の視点からの評価を増やしていきたいと思っています。信頼性も高まりますし、そういった情報の影響力がアンケート調査でも高まっているようです。お客さまの日常的なSNSやサイトの口コミなどを充実させ、「SUBARUっていいね」と思っていただけるような施策を打ちたいと考えています。

 

SNSを含めた施策について

 

須藤:SNS上の情報はコントロールが難しいですよね。メーカーのブランド担当としてどのように折り合いをつけていくべきか、イメージがあれば教えていただけますか?

 

川﨑:そうですね。企業側から発信するだけでなく、消費者が自然と発信したくなるような仕組みを作ることが大切だと考えています。例えば、投稿しやすいハッシュタグを用意したり、SUBARUの安全性能に関連して、お客さまの「助かったエピソード」をSNSで募集したりしました。予想以上に反響が良く、想定以上のご意見をいただいています。

このように、きっかけとなるようなものを用意することでお客さまに反応していただく。そういった取り組みならもっとできるのではないかと思っています。

 

須藤:なるほど。商品の特徴を活かして、ユーザーに発信の機会を作り出し、さらに周りの人たちにも影響を与えていくような形ですね。


川﨑:そうです。お客さまを巻き込んで、UGCとしてユーザー自身にコンテンツ化してもらうことも、まだ十分にできていません。例えば、SUBARUのフォトコンテストやムービーコンテストなども良いかもしれません。お客さま自身がSUBARUを楽しみ、良さを発信しやすい環境を整えていくことが重要だと考えています。正解はないので個人的な意見ですが、そういった方向性も今後重要になると考えています。

 

Kaizen Platformとの取り組みで社内でも活用できるスキルを獲得できた

須藤:4つ目の質問です。Kaizen Platformとの取り組みで期待以上だったポイントがあれば教えてください。

 

川﨑:最初、改善をあまり行えていない中で、改善でこんなに変わるんだという点が非常に大きな発見でした。例えば遷移率があんなに上がるとは思っていませんでした。改善の余地はあると思っていましたが、それを変えることでこんなに上がるのかという驚きがありました。成果の数字が予想以上に大きかったですね。

また、通常の改善だけでなく、先ほど触れた広告専用LPのような新しい改善アプローチも提案していただきました。自分自身も、既存のものを改善する以外のアプローチがあることを学べました。そういう取り組みも一緒にできたので、「こういうこともやっていただけるんだ」と期待以上でした。

須藤:先ほどお話がありましたが、新しい施策を打つことと、振り返りで積み上げていくことの両立が重要ですね。改善の特徴として、例えば赤と青どちらが良いかなど、細かい仮説も数字の裏付けで検証できるのは大切だと思います。川崎さんから見て、その辺りはどう感じましたか?


川﨑:A/Bテストがとても良いと思っています。前後比較だと、季節性や環境の変化など、様々な要因が影響しますが、A/Bテストなら同じ環境で半分ずつ比較できます。実際どちらが良かったか、どれくらい良かったかが明確に分かるので納得しやすいです。

 A/Bテストを用いた検証について

須藤:まさに仮説を立てて検証するプロセスは、デジタルマーケティングで重要ですね。この知見を活かして次はこうしてみようという流れが、ある種の育成にもなり、組織内に知識が蓄積されていくと良いですね。

 

川﨑:そうですね。ナレッジを貯めることが我々の課題だと認識しています。例えば、膨大な改善内容を含む100ページほどのパワーポイントを全員に共有し、アーカイブフォルダに保存して、いつでも参照できるようにしています。単に実施して終わりにせず、しっかりと蓄積できるようにしていきたいと考えています。


今までは正直、どう振り返ればいいか分からなかった部分もありました。しかし、今回ベストプラクティスを教えていただいたおかげで、例えば自分たちで改善した際も、「これとこれを比較した時、これが良かった」といった振り返り方ができるようになりました。社内でも活用できるスキルになると思っています。

 

カスタマージャーニーに合わせたナーチャリングの仕組みを構築していく

須藤:最後、5つ目の質問です。今直面している課題は何ですか?今後当社に期待することがあればぜひ教えてください。

 

川﨑:先ほど触れたリソースや人材の活用方法の課題もありますが、やはりナーチャリングのやり方ですね。ここは我々も正解を探している段階です。

ナーチャリングの仕組みには、メルマガやLINEなど様々な方法があると思います。1点だけでなく、面や線で捉え、お客さまの購入タイミングを把握し、ストレスのないタイミングで情報提供していく。お客さまのカスタマージャーニーに合わせたナーチャリングの仕組みを、現在あるデータを使ってしっかり構築していきたいと考えています。

 

須藤:ありがとうございます。ナーチャリングの観点で面白い発見があって、実は購入を決めた人の方が非常に多く検索しているんです。特に自動車は買う前の比較検討だけでなく、購入後に自分の選択が正しかったと確認したくなるんですね。他の人の楽しみ方を知りたくて、急に検索回数が増えたり、情報摂取量が増えたりします。大きな買い物、大きな決断なので、こういうアクションがあるのは興味深いです。

購入後も一緒に伴走できたり、次の購入タイミングを見つけていけるといいですね。

 

カスタマージャーニーに合わせたナーチャリング

 

川﨑:そうですね。我々のミッションは新規のお客さまを店舗に来ていただけるように促進することですが、既存のSUBARUユーザーに再びSUBARUを選んでいただくことも非常に重要です。購入後もしっかりアフターサポートを行い、適切な情報提供やロイヤルティを高める取り組みは必須だと考えています。良いアイデアがあれば、ぜひお願いしたいと思います。

 

須藤:実際、そういうアフターフォローとナーチャリングをうまく接続していきたいということですか?

 

川﨑:そうですね。自動車購入後も、車検や整備点検など、お客さまとの接点は継続します。そういった機会の前後でよりお客さまをサポートできる体制を構築していきたいと考えています。

 

須藤:つまり、SUBARU IDの構想としては、アフターフォローも含めてデータをきちんと収集していく考えなんですね。


川﨑:その通りです。お客さま目線で、最高の体験を提供するために取り組んでいます。そのためにデータを活用していければと考えています。

デジマの世界は正解がないからこそ改善を積み重ねることが重要

ー最後にまとめをお願いします。

 

須藤:今日は、デジタルマーケティングについてとても良い話が聞けたと思います。デジタルマーケティングの特徴は、データが取れることです。そのデータに対して自分たちの仮説を実際に検証してみて、良かった点や悪かった点を分析し、次のステップでは「これをこうして、ああして」というように、まさにPDCAサイクルをしっかり組み合わせることで数字が出てきます。

さらに、それだけでなく次の新しいアイデアも生まれてきます。「こういう風にやったらいいんじゃないか」といった具合に、分かってきたことからさらに飛躍して成果を求めていくという、一連のストーリーです。そして、その積み上げでROIを10倍にしていくという、まさにデジタルマーケティングならではのお話だったと思います。

冒頭で話したように、デジタルマーケティングの環境が急速に変化している中で、このような基本的な考え方や取り組みが非常に重要だと感じました。当たり前のことかもしれませんが、非常に大切だと思います。

今回のSUBARUさんのお話は、金融業界や不動産業界、そしてBtoBの法人営業をされている方々にも当てはまるのではないでしょうか。マーケティングと、人が必ず介在してクロージングしていくような業界の皆さんにも、たくさんのヒントがあったのではないかと思います。

川﨑さんからも最後にメッセージをお願いします。

 

川﨑:一番重要なのはPDCAの部分だと思います。どうしても「Do(実行)」のことだけに目がいってしまいがちですが、それを改善していくことの方が今は重要だと考えています。

考えて考えて時間をかけて実行することも重要ですが、ある程度見切りをつけて、あとは改善に時間を割くというようなやり方も結構ありだと気づきました。

 

須藤:まさにその通りですね。デジタルの世界では正解が分からないので、ある一定のところは実際にやってみないと分からない。だから「やってみよう」というところがすごく大事だと思います。そして、そのバランスが重要です。ハイブリッドで、今度は逆にそこから分かってきたことを仮説にしっかり組み込んで、新しいことをやってみることも非常に大切なのではないでしょうか。

今日は、自分にとっても非常に参考になる、まるで教科書のようなストーリーだったと思います。ありがとうございました。

 

最後の挨拶

 

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