2016年、センコーグループホールディングス株式会社は100周年を迎えるタイミングで社内大学を設立。次世代を担う人材育成の輩出を目指し、2020年度よりデジタルを教育企画の軸の一つとして取り組む中、ロジスティクス事業を展開する中核会社のセンコー株式会社において、2020年にDX推進部が発足。物流ニーズが高まる一方で、人手不足が社会問題にまでなっている物流業界の現状に対し、同社ではデジタルを用いた事業変革に取り組んでいます。
以前にKaizen PlatformではDXコンサルティングの一環として、社内大学であるセンコーユニバーシティとセンコー㈱DX推進部とともに、DX人材育成のためのワークショップの企画・実行を支援させていただきました。
▼参考
自ら問いを立て答えをつくるDX人材育成のために。研修後も見据えた伴走支援の裏側
そしてこの度、学んで終わりにするのではなく、実際に現場の変革に繋げていくための取り組みとして、約90日間の実践プログラムの実行支援をさせていただきました。
そこで今回はセンコーユニバーシティ部長 南里様、DX推進部 部長 吉田様に、ワークショップの振り返りから実践プログラムを行うに至った背景、またプログラム実施による社内変化や今後の展望について伺いました。
センコーグループホールディングス株式会社
人材教育部 センコーユニバーシティ 部長 南里健 太郎氏
センコー株式会社
事業政策推進本部 DX推進部 部長 吉田 聡氏
いかにOJTから脱却するか。マーケットが目まぐるしく変化する中、良質な第三者による新たな視点に期待していた
―まずはワークショップで得られた成果、また今回実践プログラムを実施するに至った背景として、どういった課題があったのか教えて下さい。
南里:ワークショップを実施して、DXが魔法のようなものではなく、自分の日々の業務を良くしていったり、お客様の抱える困り事を解決していくためのものであって、自分たちでもできるものだということがわかったことが一番の成果に感じています。
実際に現場でも、自らテーマ設定したことを社内で相談し、そこから「こうしたほうがより良いのでは」といった対話が生まれるようになってきていますし、何か新しいことに取り組もうとする人に対して応援しようという雰囲気が醸成されるきっかけとなったことと、潜在的に現場に眠るDXに対する取り組みの渇きを顕在化できたこともワークショップを行ったからこその効果です。
一方で「小さく始めて大きくしていく」という理想に対して、小さく始めてザワザワと社内にムーブメントを起こすことができたものの、そこから先のDXの取り組み自体を “大きくしていく” というところに課題がありました。
そこで学んで終わりではなく、学びを現場で使えるようにすること、そしてそれが社内により伝播し、組織の新たな風土を醸成していくためにも、今回の実践プログラムが必要だと考えていました。
人材教育部 センコーユニバーシティ 部長 南里 健太郎 氏
―今回の実践プログラムで、Kaizen Platformに期待していたことは何かありますか?
南里:やはり自社のメンバーのみで対話を繰り返していても、いままでの延長線上のアイデアが大半でした。そのため、同じ目的に向かいながらも、自社メンバーとは違う考えを持った良質な第三者の存在が必要であり、そうした新たな視点をKaizen Platformに期待していました。
そして新たな視点を取り込むことで、参加メンバーのマインドセットが「失敗してもいいから、まずやってみよう」といったものへと変わり、身近な課題解決を通じて成功体験を積み上げていってほしいと思っていました。
吉田:これまでの自社で実施した研修を振り返っても、やはり私たちの経験や学んだことからしか教えるしかできませんでした。さらに、研修の参加メンバーも上司が喜ぶようなアウトプットを出しがちです。
しかし変化が激しく、マーケットニーズも変わり続ける昨今において、自分たちの常識の範囲内で考えていては、ユーザーに対して本当に良いアウトプットは生まれません。そのため、OJTからの脱却が必要であると考えていました。
また、前回のKaizen Platformのワークショップでは参加メンバーの個々の意識の変革が見られたため、今回の実践プログラムにおいても、90日間でどういった変化が生まれるのだろうかと楽しみにしていました。
通常業務と併行して行われた実践プログラム。できないことを「できる」に変えるためのサポートを運営側として意識した
―今回、90日間で取り組むテーマは参加メンバー各々で設定されました。実際に設定されたテーマや目標を見て、どのように感じられましたか?
吉田:今回、参加メンバーが設定したテーマは、自分たちの現場での困り事などを改善するものから、改善の先に新たなビジネスモデルの創出に繋がるものなど様々でしたが、率直に「すごい」と感じました。
というのも、これまでも若手の事業プランやアイデアの提案を受けることはあったのですが、正直なところ一定のレベルに達してないものも多くありました。しかし、Kaizen Platformのワークショップを通じて課題の発見や解決のレベルが高まったからこそ、非常に的確なテーマ設定で、「こんなことを考えているのか」と驚きでした。
従来なら私が先輩目線で物事を教える立場でしたが、今回はむしろ彼らの問題提起から学び直すことも多く、あらためて私自身どうあるべきかと考えさせられました。