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2022/11/28 (月)

センコーグループホールディングス株式会社様

学びだけで終わらせないために。新たな事業アイデアも生まれた90日間のDX人材育成実践プログラムとは

著者: Kaizen 編集部

  • 業界
    小売・流通
  • 職種
    • IT・デジタル
  • 課題
    • DX推進・デジタル化
  • サービス
    • DX
DX
「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

2016年、センコーグループホールディングス株式会社は100周年を迎えるタイミングで社内大学を設立。次世代を担う人材育成の輩出を目指し、2020年度よりデジタルを教育企画の軸の一つとして取り組む中、ロジスティクス事業を展開する中核会社のセンコー株式会社において、2020年にDX推進部が発足。物流ニーズが高まる一方で、人手不足が社会問題にまでなっている物流業界の現状に対し、同社ではデジタルを用いた事業変革に取り組んでいます。

以前にKaizen PlatformではDXコンサルティングの一環として、社内大学であるセンコーユニバーシティとセンコー㈱DX推進部とともに、DX人材育成のためのワークショップの企画・実行を支援させていただきました。

 

▼参考

自ら問いを立て答えをつくるDX人材育成のために。研修後も見据えた伴走支援の裏側

そしてこの度、学んで終わりにするのではなく、実際に現場の変革に繋げていくための取り組みとして、約90日間の実践プログラムの実行支援をさせていただきました。

そこで今回はセンコーユニバーシティ部長 南里様、DX推進部 部長 吉田様に、ワークショップの振り返りから実践プログラムを行うに至った背景、またプログラム実施による社内変化や今後の展望について伺いました。

センコーユニバーシティ部長 南里様、DX推進部 部長 吉田様

センコーグループホールディングス株式会社

人材教育部 センコーユニバーシティ 部長 南里健 太郎氏

 

センコー株式会社

事業政策推進本部 DX推進部 部長 吉田 聡氏

 

いかにOJTから脱却するか。マーケットが目まぐるしく変化する中、良質な第三者による新たな視点に期待していた

―まずはワークショップで得られた成果、また今回実践プログラムを実施するに至った背景として、どういった課題があったのか教えて下さい。

 

南里:ワークショップを実施して、DXが魔法のようなものではなく、自分の日々の業務を良くしていったり、お客様の抱える困り事を解決していくためのものであって、自分たちでもできるものだということがわかったことが一番の成果に感じています。

実際に現場でも、自らテーマ設定したことを社内で相談し、そこから「こうしたほうがより良いのでは」といった対話が生まれるようになってきていますし、何か新しいことに取り組もうとする人に対して応援しようという雰囲気が醸成されるきっかけとなったことと、潜在的に現場に眠るDXに対する取り組みの渇きを顕在化できたこともワークショップを行ったからこその効果です。

一方で「小さく始めて大きくしていく」という理想に対して、小さく始めてザワザワと社内にムーブメントを起こすことができたものの、そこから先のDXの取り組み自体を “大きくしていく” というところに課題がありました。

そこで学んで終わりではなく、学びを現場で使えるようにすること、そしてそれが社内により伝播し、組織の新たな風土を醸成していくためにも、今回の実践プログラムが必要だと考えていました。

話す南里氏

人材教育部 センコーユニバーシティ 部長 南里 健太郎 氏

 

―今回の実践プログラムで、Kaizen Platformに期待していたことは何かありますか?

 

南里:やはり自社のメンバーのみで対話を繰り返していても、いままでの延長線上のアイデアが大半でした。そのため、同じ目的に向かいながらも、自社メンバーとは違う考えを持った良質な第三者の存在が必要であり、そうした新たな視点をKaizen Platformに期待していました。

そして新たな視点を取り込むことで、参加メンバーのマインドセットが「失敗してもいいから、まずやってみよう」といったものへと変わり、身近な課題解決を通じて成功体験を積み上げていってほしいと思っていました。

 

吉田:これまでの自社で実施した研修を振り返っても、やはり私たちの経験や学んだことからしか教えるしかできませんでした。さらに、研修の参加メンバーも上司が喜ぶようなアウトプットを出しがちです。

しかし変化が激しく、マーケットニーズも変わり続ける昨今において、自分たちの常識の範囲内で考えていては、ユーザーに対して本当に良いアウトプットは生まれません。そのため、OJTからの脱却が必要であると考えていました。

また、前回のKaizen Platformのワークショップでは参加メンバーの個々の意識の変革が見られたため、今回の実践プログラムにおいても、90日間でどういった変化が生まれるのだろうかと楽しみにしていました。

 

通常業務と併行して行われた実践プログラム。できないことを「できる」に変えるためのサポートを運営側として意識した

―今回、90日間で取り組むテーマは参加メンバー各々で設定されました。実際に設定されたテーマや目標を見て、どのように感じられましたか?

 

吉田:今回、参加メンバーが設定したテーマは、自分たちの現場での困り事などを改善するものから、改善の先に新たなビジネスモデルの創出に繋がるものなど様々でしたが、率直に「すごい」と感じました。

というのも、これまでも若手の事業プランやアイデアの提案を受けることはあったのですが、正直なところ一定のレベルに達してないものも多くありました。しかし、Kaizen Platformのワークショップを通じて課題の発見や解決のレベルが高まったからこそ、非常に的確なテーマ設定で、「こんなことを考えているのか」と驚きでした。

従来なら私が先輩目線で物事を教える立場でしたが、今回はむしろ彼らの問題提起から学び直すことも多く、あらためて私自身どうあるべきかと考えさせられました。

話す吉田氏

事業政策推進本部 DX推進部 部長 吉田 聡 氏

 

―通常業務と併行しての実践プログラムでしたが、運営側として意識されたことは何かありますか?

 

南里:プログラム自体は隔週で振り返りの場を設け、立てた計画に対してできたこと、できなかったこと、次にトライしたいことの3つを整理し、次の2週間の計画をアップデートするというやり方でしたが、やはり通常業務と併行して行うのは大変ですし、メンバーの中には計画したことをやれていないということもありました。

しかし、そこで「できていないじゃないか」と問い詰めることはせず、むしろどうすれば “できなかったこと” を “できる” に変えるか、一緒に解決するように意識しました。

私自身、若手時代に業務を抱えながら学ぶプログラムに参加した過去があり、学びを得たことは大変有難い機会と思いながら、実践する機会が持てず非常に残念な思いをした経験をしました。

そのため、少しでも受講生の学びが実践され、小さくとも実現に近づくように、またもし実現できなかったとしても日々の業務に繋がるようなアウトプットが生まれるよう、運営側としてできることはサポートしたいと思っていました。


DXワークショップキックオフの資料スライド

 

―今回の取り組みを通じて、メンバーのマインドセットはどう変化していきましたか?

 

南里:今回のプログラムでは若手だけでなく、マネージャークラスのメンバーも参加していました。当然ながら彼らは仕事ができ、自信もあります。そのため、日々の部下とのコミュニケーションにおいて、ときにトップダウンでの伝え方をしてしまいがちとのことでした。

しかしプログラムが進むにつれて、トップダウンでのコミュニケーションが減っていき、「自分はこう考えているけど、みんなはどう思うか」といった対話を通じて一緒にメンバーと前へ進めていくようなコミュニケーションへと変化していったことは大きな変化だと感じました。

 

吉田:ビジネスに変革を起こすという意味では、小さな効率化だけではなく、新たな価値を見出すことが求められますが、新たな価値を提示するだけでは無責任で、「そのとおりだけど、具体的にどうするの」となってしまうわけです。

そこで顧客ジャーニーや社会に対して自分たちがやるべきこと、そして自分たちがやれることなどのバランスを取りながら進めていくことが大切です。

今回の取り組みでは、実際に業務改善に繋がる具体的なプランや、新たなビジネスモデルになりうるものも生まれていたりと、無責任な価値提示だけでない、具体的な価値づくりのためのマインドセットへと変化していっていると感じています。

 

失敗してもいい場所が少ない日本。正しくやるだけでなく、課題解決に向けて自ら考え行動する風土を醸成していきたい

―今回の実践プログラムを実施して、どういった成果が得られたと感じていますか?

 

吉田:これまでも「新規事業を立ち上げよう」といった話は社内でよくありましたが、社内から生まれるアイデアはいつも「こうすれば儲かる」といった内輪のアイデアで、既存のセンコーの枠組みから出ることはほとんどありませんでした。

しかし今回の取り組みを通じて、業界の課題であったり、また既存のお客様だけでなく、社会の課題であったりに対して、こうすれば解決できるのではといった、スコープが外に向いたアイデアが具体的に生まれました

たったの90日間でそうしたアイデアが生まれ、さらにブラッシュアップできたということ自体が、大きな成果であったと思っています。

また、一般的にDXと言うと、デジタル化だとかAIを使ってどうするかといった話がよく出てくるため、近未来的なイメージが社内ではありました。

しかし、デジタルはあくまで手段であり、その先に新しい価値を生み出していくことや人間の「こうだったらいいのにな」という想いを実現することがDXであると考えてます。価値づくりというのはロボットがするのではなく、人間がするものであり、そういったDXの定義をしっかりと捉えることができたことも大きな成果だと感じています。

 

南里:吉田からもあった通り、DXはデジタル的な、無機質で冷たいイメージがありましたが、Kaizen Platformとの取り組みを通じて、DXを進めると逆に自分たちの目線は「ヒト」に向かうんだなと感じました。

お客様がこんなことに困っているだとか、業界がこんな課題を抱えているといった、それぞれの「なんとかしたい」という気持ちを想像したり、時にはインタビューなどを通じて実際に聞いてみたりと、目線が「ヒト」に向いていくということは非常に重要な気づきであり、大きな成果でした。

話す吉田氏と南里氏

―最後に今回の取り組みを振り返っての感想と、今後の展望をお聞かせ下さい。

 

吉田:そもそもで日常業務の中で自分で考えて実際に行動に移して実現するという機会はそう多くありません。物流会社という特性もありますが、言われたことを正しくやることが100点という働き方がこれまでは良しとされてきました。

しかし、社会が大きく変化し続けるいま、言われたことをただやり続けるだけではダメなんだと参加メンバー自らが気づけたことは意義があることですし、実際に取り組みを通じてメンバーらは「自分たちも意見を発信していいんだ」という雰囲気が生まれていきました。

中には、「いろいろと考えはあるけれども、自分のやりたいことは実現できない」と諦めていたメンバーもいたのですが、彼は今回の取り組みを通じて絶対に実現させてやるんだと前向きな考え方に変化していきました。

そうしたメンバーが増えていくことがセンコーにとっては大きな変革ですし、メンバーの実現させたいことを会社として受け止め、実現できる環境があるという可能性を指し示すことが重要です。

自らのアイデアを実現できる場というのを今回の実践プログラムだけで終わらせるのではなく、会社の組織風土として醸成できるよう、時間をかけてでも進めていきたいと思っています。

 

南里:多くの日本企業は「正しくやる」ということを求めてしまいがちで、失敗してもいい場所というのがなかったりします

しかし今回の取り組みを通じて、失敗するかどうかわからない中、自分たちで自ら課題を定義して進めていくという仕事のやり方が、これからの時代に求められることなのだと強く感じました。

学んで終わりでは意味がありませんから、単発の取り組みで終わってしまわないよう、これからも継続的にDX実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

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