今回は結婚相手紹介サービスで知られる楽天オーネットのマーケティング部、吉村直人氏に動画広告を運用するまでのストーリーをお伺いしました。
プロフィール
株式会社オーネット
マーケティング部 顧客開発グループ
吉村直人
楽天オーネットの「安心」を認知してもらう
ーー改めて貴社の事業内容を教えてください。
吉村:弊社は業界最大級の会員数が特徴の結婚相手紹介サービスです。独身証明書など各種書類の提出が必須で、専任のアドバイザーが付くなど、安心して婚活ができる点を強みとしています。所謂恋活を目的としたマッチングアプリなどのサービスとはそこが大きく違っており、そのためターゲット層も違っています。
ーーマーケティングとしての目標はどういった部分に置かれていたのでしょうか。
吉村:前提として価値観が多様化した現在でも、「結婚」とはやはり世の中になくてはならないライフイベントだと思っています。「生涯のパートナーを探すために、弊社のようなサービスを利用することが当たり前の世界を目指したい」、これがビジネスとしてあるべき姿で、マーケティングにおける大きな目的だと思います。
私の所属しているマーケティング部の目標としては、オンライン・オフラインの2つのKPIを指標にマーケティング施策を行なっています。基本的にはテレビCMで「結婚に本気な人にとってのサービスである」というタグラインの認知を広げ、オンラインでこのタグラインを「自分ごと化」してもらい、まずは「結婚チャンステスト」と呼ばれる簡易の診断を実施していただきます(オンラインCV)。最終的には支社にご来社頂いて入会していただく(オフラインCV)というのが大まかな流れです。
ーーターゲットになるユーザー層について教えてください。
吉村:20代後半から30代までの独身男女がプライマリーターゲットになります。そこからより細かくすると、「結婚」に対しての緊急度や婚活サービスの利用経験の有無を重視しています。というのも、そもそも結婚に対して興味がない人に態度変容を促すのは非常に困難だからです。
課題は画一的な動画配信からの脱却
ーーKaizen Adを導入する前はどのような課題を抱えていたのでしょうか。
吉村:まず大きいフレームの課題としては、新規のマーケティングチャネルを開拓していくこと、リードの獲得数を伸ばすことがキーポイントでした。例えばYouTubeだけでなく、FacebookやTwitterでも動画広告の在庫量が圧倒的に増えていますし、それを視聴するユーザー数も爆発的に増えている印象です。
その背景の中で、果たして弊社が獲得できているリードはその成長度合いと比例しているのだろうか、という疑問があり、数字をみてもそのメディアの成長とシンクロしきれていないという結論になりました。そこでベンチマークとしてメディアの伸び率と比例するようにリードの獲得が出来ている状態を目指すことにしました。
もう1つの課題が、メディアに合わせたメッセージを選択し、丁寧にコミュニケーションをしていくことでした。従来の弊社の動画施策では、網羅的にサービスの説明をした動画を制作し、それをすべてのメディアで画一的に配信していくというスタイルだったんです。かつ、動画1本の制作にもベンダーさんの選定、そしてオリエンにディレクションと、かなり長い期間とコストを掛けていました。そうなると失敗ができないのでPDCAがうまくまわらず、効果が出ないという悪循環が生まれていました。
この2点の課題を解決することが動画施策を推進する上で重要であると考えました。
ーーその課題を解決するにあたって、まずどのような取り組みから始まったのでしょうか。
吉村:まずはユーザーのインサイトに合わせて、細かく動画を制作していくことから始めました。その上で高速でPDCAを回していくことができれば、本当はどこが駄目でどう改善するべきなのか、きちんと定量的に押さえることができます。
デジタルの動画マーケティングにおいて、このPDCAによるブラッシュアップが重要であることは、Kaizen Adさんも提唱してらっしゃいますし、広告を出稿するプラットフォーム側も推奨しています。運用の自動化によってマーケターはクリエイティブをもっと磨いていくべきであり、まずはこれらをできる体制を作っていくことになりました。
ーー社内のクリエイティブ制作の体制はどのようになっていたのでしょうか。
吉村:静止画やLPは自社で作るリソースはあるのですが、動画は作り手がいませんでした。
ーーそこでKaizen Adを導入するにあたり、どのような経緯だったのでしょうか。
吉村:最初に楽天グループ全体の広告に関する施策を推進している部署の方からご紹介をいただきました。グループ内の事例やサービス資料を拝見したところ、Kaizen Adさんの思想と私がやりたいと思っていたことがとてもフィットしていたと。そこからいくつかのお打ち合わせを経て、導入に至りました。
初月からオフライン入会単価の基準をクリア。Kaizen Ad活用の裏側とは
ーー導入後、どのようにプロジェクトは進んだのでしょうか。
吉村:そもそも実績がまだなかったので、まずはスモールスタートとしてYouTubeでの動画施策から始めることになりました。
動画のゴールは「弊社サービスへの理解・利用意向の促進・アクション」でした。ですので、動画の尺は推奨よりもやや長めで、ターゲットにとって一番刺さるサービスの特徴や実績を丁寧に説明していくという動画のフォーマットに落ち着きました。加えて、アプリユーザーまで対象を絞り込んだ動画制作、配信もしています。
またGoogle広告の配信設定では、特定のキーワードで検索しているユーザーやすでに他社のマッチングサービスを利用しているユーザーなど、ユーザーの興味関心度合いに基づいてオーディエンスが作れます。やはり、セグメント化されたオーディエンスのリアルな悩みに沿って、ピンポイントの訴求を行うことで広告効果が最大化するであろうと。プラットフォーム側でターゲットを絞ることができるのであれば、こちらの訴求内容もそれに合わせない手はないじゃないですか。
ーー実際には何パターンで動画を制作したのでしょうか。
吉村:まず男女で分けて、パーチェスファネル別に4つずつ、計8パターンを制作しました。これ、普通に考えてもかなり大変なことだと思うんですよ。動画制作経験のある方からすると、1ヶ月に8本の動画を制作・配信するなんてゾッとする話です。私のケースでも数ヶ月の準備期間や社内のサポートもありましたが、担当は基本的に自分1人でしたから不安でした。
そんな中でプロジェクトをスムーズに動かすことができた背景には、Kaizen Adさんだからこその要因が2つありました。1つは媒体側の思考をしっかり汲んだ上で動画制作をしていただけるので、発信したいメッセージを掲載するメディアにおいて最適なフォーマットでアウトプットしてくれること。そしてコミュニケーションですね。丁寧にフロント対応をしていただけて、非常に助かりました。
ーープロジェクトはどのようなスケジュールで進行したのでしょうか。
吉村:5月末から定量調査を始めて、7月にコミュニケーション設計を、本格的には8月から動画の制作がはスタートしました。動画の発注自体は9月に始まり、当月中旬には納品されたので、10月から配信でした。
事前に共有は受けていましたが、本当に発注当月に、しかも2週間もかからずKaizen Adさんから納品されたことには驚きでした。また指示書の作成や発注自体も、未経験者でも問題なく行えました。この発注フォーマットの手軽さ、簡潔さにも、非常に助けられたと考えています。
ーー実際に動画広告を配信されてみて、定量的な効果はいかがでしたか。
吉村:初月は通常の広告予算とは別のトライアル枠で始めたのですが、オンラインCVが初動から問題なく付いてきており、これまで弊社がYouTube配信で感じることが出来なかった手応えを感じることが出来ました。
結果として、初月から弊社の入会単価の基準をクリアするキャンペーンを複数出すことができ、想像以上の成果をあげることが出来ました。また、オンラインCVからの入会率も他のSNS広告の3-4倍と驚異的な結果が出ています。デバイス間、男女間でパフォーマンスに差が出ているため、あとはここから改善していくイメージです。
広告は本質的にはユーザーとのコミュニケーションである
吉村:今までの動画制作のフローで言うと、分析から制作、そして配信までを1人でこなすのはそもそも現実的ではなかったと思います。動画制作のところで、Kaizen Adさんがプラットフォーム側の意図をしっかり消化し、連動されているからこそ、スピード感とクオリティが両立できるのではないでしょうか。
「複数の訴求軸から勝ちパターンを見つけ出していく」、「スモールスタートで静止画から動画へ」という形でスムーズに進行出来たので、こちらも高速でPDCAを回す状態が作りやすかったです。ですので、動画制作の知見やリソースが足りない企業でも、動画広告へアプローチができるので、非常にありがたいと感じています。
ーー今後はどのように動画広告を展開していきたいとお考えでしょうか。
吉村:今回のテスト配信を通して、動画広告に対する不安要素を払拭することができました。ただ配信するだけではなく、今回の結果に基づいて表現手法や尺を変えたりと、動画のクリエイティブ改善を進めていきます。そのためにはKaizen Adさんを活用して自分たちでも「効果のある広告動画とは」について考えていくことが必要であり、今後もこのスタンスを続けていきます。
また、広告は本質的にはユーザーとのコミュニケーションだと思っています。一方的なメッセージを発信するのではなく、セグメントごとの悩みに合わせてコミュニケーションを変えていくことが必要です。また、メディアによってユーザーももちろん変わるので、メディアやデバイスごとの最適なクリエイティブを引き続き模索していきます。
ーーありがとうございました。
<取材=大木一真 文・写真=大木一真>