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2020/12/11 (金)

寺田倉庫株式会社様

【DXのキーマン直撃】寺田倉庫が実現する「次世代トランクルーム」の形

著者: Kaizen 編集部

  • 業界
    小売・流通
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    • 経営・企画
    • IT・デジタル
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    • DX推進・デジタル化
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DX
「世界をKaizenする」をミッションに事業を展開しているKaizen Platformがお届けする「世界をKaizenしている人」に注目した本連載。

寺田倉庫株式会社専務執行役員月森正憲氏とMINIKURAグループの今成真之介氏の写真1950年の創業から、BtoBの倉庫事業や物流サービスを主軸に成長を続けてきた寺田倉庫

トランクルーム事業においても、業界内で確かなポジションを確立していましたが、2012年にすべてのやりとりがオンラインで完結する宅配型トランクルーム「minikura」のサービス開始によって、さらなる飛躍を遂げました。以降、倉庫会社としては異例のDX(デジタルトランスフォーメーション)企業として注目を集めています。

老舗の倉庫会社が、なぜDXに乗り出し、何を得たのか。寺田倉庫が見据える「人々の生活の革新」について、同社の専務執行役員である月森正憲氏とMINIKURAグループの今成真之介氏に伺いました。

※本取材は、撮影時以外、全員マスクを着用して実施しました。

オンラインで完結する次世代トランクルーム「minikura」

――minikuraのサービス内容について教えてください。

今成 minikuraは、箱単位で倉庫を借りることができる宅配型トランクルームです。

寺田倉庫のサービス"minikura"の画面イメージ(出典:https://minikura.com/

荷物の受け渡しや契約を締結するのに現地に行く必要はなく、すべてオンラインで完結。預かった個品は、一点一点撮影し、ユーザーは撮影された写真をマイページで確認できるため、トランクルームでよくある「何を預けているか忘れてしまった」ということがありません。

一箱250円から始めることができるので、一般的にトランクルームよりも気軽に利用できるのが特徴です。

――minikuraの事業の中で、お二人は何を担当されているんですか?

月森 私は、minikuraグループ内の各チームを総括する役割を担当しています。

チームは全部で三つあり、一つ目はminikuraを運営する「サービスチーム」。二つ目はグループの全サービスを支える「オペレーションチーム」。そして三つ目がminikuraのAPI提供によって大手やベンチャー、スタートアップ企業と提携する「セールスチーム」です。

インタビューに答える月森氏の写真

専務執行役員・月森正憲氏

今成 僕はサービスチームのリーダーを務めており、アクセス解析やリスティング広告など集客周りをメインに、予算立てから売り上げの管理までを担当しています。

実は、もともとはweb広告代理店としてminikuraの集客を外部から手伝っていたのですが、あるとき月森から「外からマーケティングをするんじゃなくて、中に入って一緒にやろうよ」と誘われたことをきっかけに寺田倉庫に中途入社しました。

月森 プロジェクトの開始当初、私はマーケティングのマの字も知らなかったんです(笑)。だから餅は餅屋として外部の企業に手伝ってもらっていたのですが、それだと知見がたまらないし、スピード感を持って進められないんですよね。そこで社長に頼み込み、内製化してワンストップで作っていける体制に変えたという経緯ですね。

倉庫業にとっての「当たり前」に大きな価値があると気づいた

――もともとのトランクルーム事業に加え、オンラインで完結する宅配型トランクルームを開始したのには、どのような背景があったんですか?

月森 プロジェクトが始まったのは今から10年前に遡るのですが、当時の寺田倉庫はBtoB領域の拡大に注力していました。

ただ、BtoBの物流というのは、荷主様から相見積もりをとられてリプレイスされたり、取り扱い数が増えたり減ったりはこちらがコントロールできない世界でして。寺田倉庫としては、そこで価格競争や荷主様に依存しつ続けることの危機感や、今後どう生き残っていくか考えているうちに、我々にしかできない価値をつくっていくべきだと考えたんです。

一度自分たちの原点に立ち返り、人々の生活に寄り添った「次世代のトランクルーム」を作ろうと、minikuraの前身となるプロジェクトがスタートしました。

インタビューに答える月森氏の写真

――BtoBからBtoCへ舵を切るにあたって、社内で反対の声はなかったんですか?

月森 BtoBの取り引きとしては安定していたので、やはり賛否両論はありましたね。当時は「こんなのうまくいくわけないよね」と冷ややかな視線を受けつつも(笑)、2年かけて準備を進め、サービスをローンチしました。

――ローンチ直後の反応はいかがでしたか?

月森 それが、ローンチの2日後くらいにSNSで大きな話題になり、かなり拡散されたんです。風向きが変わったのはそのときですね。

倉庫会社の仕事は、「荷物を完璧に管理できて当たり前」という減点方式。今まで自分たちの提供価値について考えることってあまりなかったんです。そのため「徹底した保管管理」や「一品一品のユニーク管理」など、倉庫会社からしたら当たり前の取り組みが外から評価されるということは、会社として大きな気付きでした。

同時に、ここを磨いていけば良いサービスになるだろうなという自信を持てました。

――自分たちの強みというのは、外から見ないとなかなか分からないですよね。

DXの成功は、「短期の業績を我慢できるか」が重要

インタビューをするKAIZENメンバーとそれに答える月森氏、今成氏の写真

――小売やメーカーなど、さまざまな業界でDXに取り組む企業が増えていますが、その中でも成功した企業の割合は世界でも5%に届いていないと聞きます。DXを進める中で、何が障壁になっていると思いますか?

月森 私たちは、APIの技術提供を通じてさまざまな企業とプロジェクトを進めてきましたが、その中には残念ながら事業が継続せずに撤退してしまった会社もあります。

一つ言えるとしたら、DXはすぐに数値的な結果に結びつくわけではないということ。実際に、他社と協業であるサービスを行なったことがありますが、期待していたほど会員数が伸びず、1年を待たずに撤退したことがあります。

――数値的な結果だけを求めても成功は難しいと。それでは、DXに挑む際に必要なことはなんでしょうか。

月森 会社として、続けることの意味を見出すことではないでしょうか。何かを変えるには、どうしても時間がかかってしまいます。足元の数値は1、2年では劇的に変わりません。だからこそ、生活であったり、仕組みであったり、社会を変えるという視点で、長期的なビジョンを描いていかなきゃいけないのだと思います。

――minikuraを8年間続けてきたことで、ユーザーへの提供価値に変化はありましたか?

今成 minikuraを始めるまでは、寺田倉庫の視点は「企業にとって倉庫を便利に使ってもらう」という部分に向いていたのですが、minikuraを通じてユーザーの生活が垣間見えるようになってからは、「人々のライフスタイルを変革する」ことに視点が変わったと感じています。

インタビューに答える今成氏の写真

MINIKURAグループ・今成真之介氏

僕がこの会社に入社して驚いたのは、新しい文化を作ることに投資を惜しまないことでした。社内のそこに対する熱量がとても強いんです。トップもCXの向上を重要視しているので、今となってはデジタルシフトも必然的だったのかなと思います。

――今さらスマホからガラケーに戻れないように、ユーザーにとってのスタンダードな存在になると生活を大きく変えますね。

月森 そうですね。まだ道のりは遠いとは思いますが、minikuraが人々の生活に価値を生み出ことで、新しい定番として定着することを目指しています。

Kaizen Platformとの取り組みは、「顧客は誰か?」を1から考え直す良い機会に

――Kaizenとの取り組みを始めて4ヶ月となりました。取り組み開始時、Kaizenへどのような印象を抱いていましたか?

今成 前職のつながりで、Kaizenさんの評判はもともと耳にしていたんです。僕たちが今まで取り組めていなかったABテストのツールやプラットフォームがあると知ってはいたのですが、個人的には全社でマーケティングに力を注いでいるような会社じゃないと導入は難しそうだなと思っていました。

なので、取り組みを始めるとなったときは、一人のマーケターとして「あ、使えるんだ」という期待感がありましたね。

インタビューに答える今成氏の写真

月森 最初のご提案をいただいたときに、二つ感じたことがありました。一つ目は、サイトの集客数と会員登録者数の差異について指摘してくれたことが、とてもありがたかったです。私たちがなかなか取り組むことができていなかった部分を「当然やるべきでしょう」とズバッと言ってくれたことで、その重要性を痛感しました。

二つ目は、私たちのお客様がどこにいるかを必死に考えてくれたこと。最初のプレゼンのときに、「提携先を増やしていきましょう」と提案されたときは、「ん?」と思ったのですが、実際にKaizenさんが見ていたのは提携すること自体ではなく、私たちのお客様がどこにいるのかということで。私たちにはその視点が欠落していたんです。トランクルーム検討層にどのように興味を持っていただけるか、しか考えていなかったのに、「そうじゃないんです」と正面から意見をくださったことが本当に嬉しかったですね。

サービスやブランドを含めて、私たちは「どういう人たちに使ってほしいのか」を一から考え直す良い機会だったなと思います。

インタビューに答える月森氏、今成氏の写真

今成 そうですね。実際にプロジェクトが走り始めてからも、ニーズ・ターゲットの測り方や、市場規模とユーザーインサイト、現状の課題から目指すべきところを導き出す考え方に、すごく助けられています。

――最後に今後の展望について、教えてください。

月森 サービスとしては、まだまだ試行錯誤のところもあるのですが、さらにユーザーの生活に寄り添っていきたいです。今は預かるだけですが、ゆくゆくは生活にまつわるいくつかのソリューションを提供できるようなサービスに進化させたいと思います。

そのためにも、「預ける」という機能がユーザーにとってストレスなく利用できるように、サイトを進化させていきます。

今成 インフラというよりは、サブインフラのような存在を考えていますね。トランクルーム検討層だけではなく、大事なものを外部に保管することで、物理的なスペースや精神的な余裕を得られる、という部分で刺さる方が増えればいいなと。

預けた先に、どんな体験があるのか。そこを突き詰めていく必要性を感じています。現状は、個品に対するオプションが、クリーニングと「ヤフオク!」への出品しかないので、オプションの拡充が当面の課題になりますね。

月森 minikuraを利用したことで部屋のスペースが空いた人にオススメの家具を提案・販売したり、引っ越しを検討している人に対して引っ越しの手配をこちらでできるようにしたり、預けた先の体験がポジティブに連動していくと面白いですよね。

Kaizen Platformは、みなさまのチームの一員として、サイトの課題を見つけ改善していきます。ご相談は、お気軽にどうぞ!

<インタビュー=KaizenPlatform横堀将史、取材・文= 早川大輝、撮影=高澤梨緒、編集=Kaizen Platform公式note>

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