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ビッグデータ元年から丸一年 【後編】 ――カスタマーに幸せをもたらし収益にもつなげるためにできることとは?




データ活用とパーソナライズビッグデータがもたらす顧客体験&収益向上―イベントレポート

「ビッグデータ利活用元年」と位置づけられた2017年から1年以上が経過しました。各企業が多くのデータを収集していますが、それらは顧客体験の向上や企業の収益向上につながっているのでしょうか。どうすれば、繋げることができるのでしょうか。

クレディセゾン、オムニバスとともにKaizen Platformが、2019年1月30日に開催したセミナーでは、「世の中の”誰”を幸せにするべきか?」をテーマに事例を交えながら、2019年度にキーとなるデジタル戦略について議論を交わしました。後編では、オフィスフレンジー代表野林氏による「顧客心理の捉え方」についてです。




顧客体験を最大化するには耳を傾け、心を揺らす努力を ~カスタマーを幸せにするパーソナライズ~

後半に入り、リクルート、ローソン、ブックオフ、レッグス、FiNCといった分野の異なるさまざまな企業でプロモーションプランニングを担当し、現在は有限会社オフィスフレンジーの代表 兼 鎌倉新書の野林徳行氏をスピーカーに、Kaizen Platformの須藤憲司をモデレーターに迎えて、デジタルな手法で獲得したデータをパーソナライズに活かすことで、どのようにカスタマーを幸せにできるのか、という観点のトークセッションが行われました。

株式会社 Kaizen Platform Co-founder & CEO 須藤憲司


須藤は、「パーソナライズは、いまやあちこちで見られます。NetflixやAmazonを開けば、自分が好みそうなものが表示されているし、Googleでワード検索すれば、自分にカスタマイズされた検索結果が表示される。それによって、自力で自分の好みに合うものを探し出すという労力から解放される」とパーソナライズのメリットについて説明。


とはいえ、「パーソナライズには、データの蓄積、分析・加工・集計のうえ加工、活用の3つの工程が必要だが、それぞれ『どのように』というところが見つけづらい」とその難しさについて解説しました。そのうえで、「時間軸への着目が必要なのでは、というアドバイスを企業に行っている」と言います。


野林氏も「アルバイトへの応募があった際、48時間以内に返答しないと8割が離脱する」というデータを披露。「結局、応募しようという人の気持を考えていないと、人材獲得につながらないんですよね」と、ストーリーを描いていくことの大切さを強調しました。例として野林氏がリクルート時代に関わった「ゼクシィ」について話してくれました。


有限会社オフィスフレンジー 代表 野林徳行氏


「当時、ゼクシィは向かい風が強かった。紙メディアだし、結婚する人は少なくなっているし、さらに式場を使おうとする人も減っている。だけどギネス的な部数を叩き出す号もある。それはゼクシィは『らしさ』をないがしろにしない。生の声を聞いて、それを誌面や付録に反映していたから」(野林氏)


「花嫁すぎるゴム手袋」や「乙女すぎるドライバーセット」などはゼクシィらしさが記録に繋がった好例だと野林氏は続けます。デジタルな手法でデータを獲得したとしても、その先にいるのは食べたり旅行したり買い物をしたりするリアルな人間。「データから、”人間”と向き合い、考えて行くことがカスタマーを幸せにする施策につながるのです」と野林氏は強調しました。


それに対して須藤は、「デジタル技術の向上で、カスタマーに提供できる幸せに変化が起きたのか」という質問を投げかけます。


「劇的に変わっている。スーパーで届くDMでさえパーソナライズされ、必要な情報が必要な人に届くようになっている。しかし、まだまだ発展の余地はある。現在は、検索ワードから出てきた結果からお客様自ら目的の商品を見つけ出している。今後は、機械学習や人工知能が発展することで『この3つから選べます』と探す手間が激減していくかもしれない。まだ、僕たちや皆さんが関われる余地はたくさんあると考えています」(野林氏)


最後に、「カスタマーを幸せにするためのデジタル活用」について須藤氏がたずねました。それに対し、野林氏は、ローソン在籍中に手がけた、商品に付いたシールを集めてお皿をもらえるキャンペーンを例に出して答えます。


「あのキャンペーンはもともと男性向けではありませんでした。でも、終了間際になると男性の購買率が高まる。奥さんに言われて、シール付きのお弁当を買っているのかな?とは推測できますよね。でもそこで終わらせては、お弁当を買う男性客にとってなんの幸せにもつながりません。男性が好みそうなお弁当にもシールを貼付することで、無理なく買っていただけるのではないでしょうか」(野林氏)


野林氏がこだわったのは、どんなストーリーがあって購入に至っているのだろう? どんな気持ちだろう? じゃあ、それをメリットにするにはどうしてあげたらいいだろう? をデータから読み解っていくこと。お店に来てくれるお客さまに「なぜなのか」を教えてもらう。お店に来てくれない人の理由も知るように努める。「自動的に取れるデータだけでなく、聞き取った情報もフル活用して思いを巡らせるようにすれば、お客さまがどうすれば幸せになれるかが見えてくるんじゃないかな、と思います」と野林氏は力説した。


同じような施策を行っていても「お客さまの声に耳を傾けているかどうか」。心揺さぶる「欲しい」を生み出せるかどうかが、ひいては成功と失敗にも繋がっていく。施策の成功は、それだけ顧客が幸せを感じられた証左。直接見聞きしたものであれ、デジタルを介して取得したデータであれ、リアルな人間と向き合い、ストーリーを考えて取り入れていくことが、カスタマーの幸せにつながる、ということがよく理解できるお話でした。


参加者からの質疑応答

Q:野林さんにうかがいたい。データを取得し商品を開発する、というPDCAを回していく中で、販促を行うとデータにノイズが生じてしまわないか心配。


A:「データを管理している会社から、全データをもらうようにしましょう。期間全体として平均した値を捉えるのではなく、デイリーで観測するのです。ピンポイントで効果がわかれば、ノイズになることはない。ペースもわかって、メリットしかありません」(野林氏)


Q:小林さんにお聞きしたいのですが、Tableauを基にしてBIツールを開発された、とのことですが、開発で苦労したこと、どのような部分に重きを置いたのでしょうか?


A:「実際に開発したのはSIerでした。実は、流通向けのツール開発の経験がなく、そもそも建設現場関連の開発を主に行っている企業。ただ、自社でも経験がないからこそ『一緒にチャレンジします』とわたしたち商品部のやりたい機能を実装してくれました。何があると行動が変わるのか。それに重きを置いて、誰が見てもわかるように見せ方も工夫して開発してもらえたのが良かったです」(小林氏)


Q:ローソンではセグメントの見直しは行っていますか。どのぐらいの頻度で?セグメントは最初から9個と決めていたのか。また名前は誰がつけたのか。


A:「年に1回、見直しています。データを分析していて、最初の結果が多すぎたのでどんどん絞り込んだ結果9個になりました。システム部の人が勝手に名前をつけるところもあるでしょうが、名付け作業は商品部で行いました」(小林氏)


Q:須藤さんにリコメンド機能について教えて欲しい。オフィスの総務とかで、一人の人がたくさんの商品を購入する場合、購入者が消費者ではないことが多々ある。そうなると、購買のジャンクデータをどのように排除し、精度を高められるか。


A:「子ども服の例がある。親が買うけど、お金を出しているのは祖父母。ユーザーは子ども。購入の意思決定者って誰だろう、というところを見極めるのが実は重要。子どもに聞いてもわからない。親に聞いても意思決定ができないかもしれない。発表会で必要なのであれば、どう見えるのかが大きなポイントだったりする。結局のところ、どのようなストーリーがその裏側にあるかを読み取り、マーケティングに活かさないといけない」(須藤氏)


イベントレポートまとめ

今後、”データ”活用は広がっていきます。肌感としてはわかっていても、具体的にはどう広がっていくのか、どう対応していけばいいのか。今回は、各登壇者が実例を交えながら平面的な数字だけではなく、”生身”の人と向き合っていくこと。そしてそれが顧客にとっても自社にとっても”幸せ”へと繋がっていくというお話をさせていただきました。


Kaizen Platformでは、今後も同様のセミナーを開催してまいります。



【登壇者プロフィール】


矢野茂樹

株式会社オムニバス 代表取締役 COO 

アドテクノロジーを活用したデジタルマーケティング支援を行う 株式会社オムニバスの初期から携わる。2016年同社代表取締役就任。

2017年4月にオムニバスのクレディセゾングループ入り後クレディセゾンの デジタル事業部も兼務し、セゾンデータを活用したサービスの開発・提供に従事する。



磯部泰之

株式会社クレディセゾン 取締役 デジタル事業部部長 兼 デジタルマーケティング部長

1992年クレディセゾン入社。

営業企画やDBマーケティング推進業務に従事後、銀行・百貨店・コンビニ等との合弁会社へ出向。

その後経営企画部、広告宣伝部を経て、2011年よりデータビジネス事業企画、ネットビジネスでの新規事業開発を担当。

また、2015年VBとの事業シナジーを目的に設立した「セゾンベンチャーズ」にて取締役を兼任。 

2017年ネット事業部長、セゾン投信(株)取締役(現任)、(株)オムニバス取締役就任(現任)。

2018年より取締役 兼 デジタル事業部長。



小林敏郎

株式会社ローソン 経営戦略本部 次世代CVS統括部 兼 商品戦略本部 マネージャー

1997年、ネットビジネスを行いたいと思い、ローソンに入社。

その後1999年からネットビジネス参入の企画、公式HPの企画運用を担当。コールセンターのローンチにもかかわる。

2003年には合弁会社ローソンCSカードに出向しクレジットカード会員獲得の企画運用を担当する。

同社がクレディセゾンに吸収合併された2008年以降、本社に戻り、カード分析や会員向け施策の企画運用を。

2010年以降、現職。ID-POSデータ分析/調査のほか、BIツールの設計/導入、外部データの分析を担当する。


野林徳行

前 ローソンエンターメディア代表取締役社長 現 有限会社オフィスフレンジー代表

1987年リクルート入社。プロモーションプランニングを担当。カスタマーを知るを通じて業績貢献。2003年ローソン入社。執行役員として、マーケティング、エンタテイメント、商品開発などを担当し、数々のヒット企画を生み出した。2010年ローソンエンターメディアの代表取締役社長に就任。2012年レッグス専務取締役CMO就任。キャラクタービジネスを推進。2016年FiNC取締役CMO就任。ヘルスケアアプリのマーケティングを担当。現在は、ブックオフコーポレーション取締役、高木学園マーケティング講師、企業のマーケティング顧問。著書に「とことん観察マーケティング」。現場を知る、カスタマーを知ることでステキ創りをするための講演を展開中。


須藤憲司

株式会社 Kaizen Platform Co-founder & CEO

2003年に早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。

現在は日本、US、韓国、台湾の4拠点で事業を展開。WebサービスやモバイルのUI改善する「Kaizen Platform」、動画広告改善の「Kaizen Ad」、世界40ヶ国10000人以上のネット専門人材ネットワークからクラウド上で企業のデジタルマーケティングチームを提供する「Kaizen team for X」を提供。




          



Re;(アールイー)編集部

Re;(アールイー)編集部

マーケティングの価値を再発見、Re:編集部です。マーケティングから経営課題まで、Tipsやインタビュー、対談記事など、マーケッターや経営者、カスタマー視点の情報をお届けします。

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