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「スポーツとビジネスには共通点が多いんです」、常勝チームが大事にしていたものは


田中安人さんインタビュー第1話(全3話)


「マーケティング」をRe:(再)発見、確認していく本連載。

今回登場していただくのは、吉野家のCMO、コンサルティング会社のCEO、公益財団法人日本スポーツ協会の広報委員という3つの顔を持ちパラレルワークで活躍する田中安人さん。帝京大学ラグビー部のマネジメントに深く関わっている田中さんに、これまで人材やスポーツTECHに関わってきたカイゼンプラットフォームの横堀将史がインタビューしました。

第1話のテーマは「スポーツとビジネスの共通点」。

「スポーツができる人は天才。その能力はビジネスにも応用できる」と語る田中さんの話には、数多くの人材育成のヒントがありました。



途方もない目標を掲げたほうが、最終的に高いところまでいける


横堀:

田中さんは帝京大学ラグビー部のご出身で、現在マネジメントも担当されているんですよね。田中さんが企画・編集された現ラグビー部の岩出雅之監督の著書『常勝集団のプリンシプル 自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント』を読みましたが、スポーツのスキルやマネジメント術って、ビジネスをするうえですごく参考になりますね。


田中さん:

そうなんです。僕はスポーツができる人は天才だと思っています。イメージした通りに体を動かす力、目標を設定して達成する力、好きなものをとことん追求する力。これらは、スポーツというフィールド以外でも求められる能力ですよね。だから、スポーツができる人は思考を変革させれば勉強もビジネスもできるはずなんです。


横堀:

前に田中さんが「ラグビー経験者はビジネスで成功する人が多い」とおっしゃっていたのが印象に残っています。ラグビーとビジネスの共通点ってなんですか?


田中さん:

ラグビーは徹底的にチームスポーツです。「One for all, All for one」、つまり「一人はみなのため、みなは一人のために」という考えかたが基本にあります。なので、大所帯の組織の中で生き抜く能力が自然と身につくんです。周りをリスペクトする精神が育ちますし、自分で考えて行動できる人材が育ちます。ラグビーは試合が始まると監督はフィールドに出られません。選手一人ひとりが状況に合わせて自分で考えて動かなければならない。周りと協力していく力、自ら考えて動く力…これはビジネスでも求められますね。


横堀:

スポーツって全般的に、技術が身につくだけではなくて取り組む過程で人間力を養うことができます。「もっと成長したい」という欲求を持ったり、目標を設定して課題をクリアしていったり。


田中さん:

そうですね。ラグビーに限らずですが、目標設定は高ければ高いほどいいんです。途方もない目標を掲げたほうが、最終的に高いところまでいけます。例えば、帝京大学ラグビー部ではかつてチームが発展段階だったころ、最初に「大学日本一になる」という目標を掲げました。その年は大学日本一にはなれましたが、社会人チームと対戦したら1回戦で負けてしまったんです。


横堀:

それは意外です!帝京大学は常勝チームのイメージでした。


田中さん:

だから、「社会人チームに勝つ」という目標を立てました。1回戦で負けた相手に勝つ、これは高い目標ですよね。目標通り1回戦は勝つことができました。しかし、なんと2回戦で負けてしまったんです。これは1年前から負けることが決まっていた目標設定だったわけですね。だから、「日本一になる」という目標を設定したんです。


横堀:

その経験が、いまの帝京大学、常勝チームにつながったんですね。


田中さん:

目標を高く設定するということはつまり、ゴールを少し先に設定するということ。100m走を例に挙げると、120m地点がゴールだと思って走れば100mは通過点に過ぎません。力を抜くことなく全力で駆け抜けることができますよね。だから、100mを目標にしている人よりも当然いい結果が出せる。あのとき僕らは70m地点をゴールに定めてしまっていたようなもの。残り30mが走りきれなかったんです。


横堀:

なるほど、それはとてもわかりやすい例えですね。


田中さん:

これはビジネスでも同じだと考えています。そもそも、人は設定した目標よりも先に行くことはできないんですよ。目標設定を低くすることは自らの可能性を制限してしまうことになるんです。だから、周りが「そんなの無理だよ」って言うくらいの途方もない目標を立てて、一つずつ課題を乗り越えていけば、必ず達成することができます。


「オレについてこい」は時代遅れ


横堀:

最近、現場での指導方法が問題になっていますよね。これらの問題について田中さんはどう思われていますか?


田中さん:

いまスポーツ現場で起きている問題は、指導者側の根底にある「オレのために」「オレのやりかたに従え」という意識が原因のひとつではと思っています。これは、すごく昭和的な発想なんですよね。そこには何のビジョンもありません。


横堀:

昭和的な発想とは?


田中さん:

いまの指導者が現役選手だった頃は「水を飲むな! とにかく走れ!」みたいなことが当たり前でした。そして、「オレ達もそうやって強くなったんだからな!」と指導者は言う。こういう「オレについてこい」といった指導がいわば昭和的な発想なんです。

もっとわかりやすく言うと、「なんでお前はできないんだ!」って怒りながら言う人がいますよね。これって、実は「オレならできるのに」という主語が隠れている。そんなこと言われたって、理由なんか理解できませんよね。たとえ「お前のためにやっている」と口では言っていたとしても、結局は全部自分のためにすぎないんです。でも、いまの平成生まれの選手たちにその指導は通用しません。


横堀:

「オレについてこい」の指導だと「指示されたことだけをやっていればいい」と思ってしまうから、「なぜそれをやらなければいけないか」を選手たちが理解できないんですね。本人が「なぜやる必要があるのか」を自覚して、自分で走り出せる環境が必要なのかも。


田中さん:

そうなんです。人は強制されたことは習慣化しません。監督する人がいなければすぐに辞めてしまうし、やらされていたことはすぐに忘れてしまいます。でも、自分で決めたことや自分がやりたいことは習慣化することができる。好きなことなら誰でも夢中になってやり続けるので、その分結果にもつながります。


横堀:

これってスポーツに限らず、あらゆる組織で共通することかもしれませんね。


田中さん:

スポーツでもビジネスでも、いいリーダーというのは各メンバーの適正な能力を把握して適切な目標を設定してあげることができる人です。組織が何を目指していて、一人ひとりに何を求めているのかも明確にする。ビジョンをしっかり掲げることが今のリーダーに求められます。そしてもう1つ。「オレについてこい」と前を先導するのではなく、チームのみんなと一緒に走る「伴走力」が必要だと思います。


→第2話「行き先不明の豪華な船、行き先が書かれた小さな船。乗りたいのはどちらですか」に続く



          



Re;(アールイー)編集部

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マーケティングの価値を再発見、Re:編集部です。マーケティングから経営課題まで、Tipsやインタビュー、対談記事など、マーケッターや経営者、カスタマー視点の情報をお届けします。

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