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チョコレートを期待しているお客様に、カカオ豆を渡してはいけない


ワタシのカイゼン学 

Fringe VP of New Business Development

佐藤洋介さん



各企業で活躍するマーケターに日々の取り組み、考えかたをうがかっていく「ワタシのカイゼン学」。第二回は、リクルートライフスタイルの石井智之さんから紹介いただいた佐藤洋介さん。佐藤さんはFringeで事業開発を手がけており、石井さんからは「事業、プロダクトを開発しながら、どうやって売るかまで考えている凄いマーケターです!」とご紹介いただきました。



「いろんなことが上手くいった!」という感覚の事業は結果が出る


私はFringeの新規事業開発を行う部署で、これまで3〜4の事業を立ち上げてきました。入社から8年経ち、ある程度の規模までいける事業を作れるようになってきたと実感しています。いま手がけている「Columva」は、運用型広告の運用実績や出稿結果を取得し、蓄積していくことで運用ミスを防ぐ企業のマーケティング担当の仕事を支援するツールです。


広告運用は、自分が設定を間違えると一時間で数十から数百万の損害が出てしまいます。設定する頻度が多く、失敗するリスクも高い。例えば、外出しているときに「家の鍵しめたっけ?」と思うことがありますよね。そう思ったら気になってしょうがない。広告運用の担当者は、休日でも「あれをちゃんとやっていたかな…」と管理画面をチェックするなど気が休まりません。こうした悩みを事業開発という仕事を通して、ケアしたいと考えています。


私は「マーケティング」を専門的に語れるようなことはしていません。ただ、事業開発という観点から捉えると、マーケティングは経営から事業、現場まで幅広くしみ出していると感じています。マーケティングでよく言われる「4P」、プロダクト、プレイス、プライス、プロモーション。とかくプロモーションばかりが考えられますが、私が開発した事業の中でも、良い結果に繋がった事業は「プロモーションが良かったから」「プライスが良かったから」という理由で上手くいった訳ではありませんでした。


「いろんなことが上手くいった」という感覚なんです。4Pや会社組織、エコシステム、業界全体の課題感などすべてが「上手くいった」。その結果、「業界各社が持っていた共通課題をFringeさんが解決しているらしい」とパートナーや顧客、競合からも言っていただけるような事業に成長させられたという感覚でした。


勝手な思い込みですが、マーケターとは指揮者みたいな存在ですよね。自社や競合、業界、社会も含めて一商品を顧客に届けるまでを考える。USJをV字回復させた森岡毅さんは「マーケティングをやるには組織から改革しないといけない」と仰っていましたが、本質は同じだと思っています。



チョコレートを期待しているお客様に、カカオ豆を渡してはいけない


仕事では、常に「期待値」を意識しています。例えば、チョコレートに期待するものは明快。甘さや濃厚さですよね。ビターもありますが、「甘い」を期待したのに「辛い」チョコレートだったら二度と買ってもらえません。


そして、タイミング。歯を磨いたあとにチョコレートをもらっても嬉しくないですよね。これがソフトウェア、デジタルだと難しい。顧客も「どういう価値を得たいのか」が言語化しづらいと思っています。だから、私たち提供する側は「きっとチョコレートが欲しいんですよね」と言語化して伝える必要がある。


でも、私たち自身が誰に何を提供したいのかわかっていなければ、ときとして顧客の手にはカカオ豆を渡していることがあります。これでは期待値がズレてしまいます。顧客は成果が欲しいのです。だから、常に業界動向や顧客が求めていることを予測しながら、「誰に対して、何をどう伝え、どんな価値を提供するか」は徹底的に考え抜いています。


ただし、理想と現実はズレが生じることもある。「新製品ではこういうことができます」と言っていたけど、現時点でそれができない。もっと端的に言えば、「いまは悪い」。それをどうすれば良くなるのかを考える。お客様には「いまはまだ使えませんが、3ヶ月後に実装します」と素直に話すなど、期待値を調整する工夫は大事だと考えています。


ほかにもお客様が何につまずくのかを意識しています。解約をするお客様は、「ツールが適していなかった」のか「ツールを使いこなせなかったのか」、どちらなのか。買ってもらおうと「使いやすいです」と言っていたけど、買ってみたら使いづらかった。これもチョコレートを期待していたお客様に、カカオ豆を渡しているのと同じですよね。


事業開発も好む好まざる関係なく、このようなマーケティング的なことを考えないと上手くいきません。鳥の目、虫の目で見て、先周りして解消することが求められていると思っています。



事業開発は近未来に向かっていく仕事

映画を見ていると「近未来」って出てきますよね。新卒のころはよく「近未来にいたい」と話していたんです。あの概念はとても面白い。常に“いま”よりちょっと先の未来なんです。その未来にたどり着いたら、また新たな近未来が生まれている。


事業開発は近未来を想定していく仕事だと思っています。「これが失敗したら倒産してしまう」という覚悟が必要な仕事ですが、「これなら当たる」という予想も立てづらい。可能な限り情報を集めて、「どうなるか」と考えながら、複数のあり得る近未来の1つを現実のものとすべく向かっていきます。


ただ、自分はこうした予測が難しいことが好きなんです。もし僕の頭がもっと良かったらこんな博打のような仕事は「リスクが高い」とそもそも興味を持たず、こんな面白い仕事に出会えなかったかもしれません。これからも近未来、ちょっと時間軸がズレた世界から見て考えていきたいと思っています。





          



Re;(アールイー)編集部

Re;(アールイー)編集部

マーケティングの価値を再発見、Re:編集部です。マーケティングから経営課題まで、Tipsやインタビュー、対談記事など、マーケッターや経営者、カスタマー視点の情報をお届けします。

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